人生で影響を受けたもの
もう一カ月以上も前のことであり今さら感が拭えないが、作家の野田知佑氏が永眠された。
かなり長いこと氏の書いたものに触れていなかったが、かつて私がまだ青年であったころの人生観やものの見方などの道標の一つであったと言える人で、この人の書いたものから受けた影響は私にとって小さくなかったと思っている。
今回、氏を追悼する意味でブログを書き始めているのだが、その流れで私がこれまでの人生において影響を受けた人物について触れてみようと思い立った。
大なり小なり影響を受けた人物というと紙面上書ききれないと思うため、野田氏にちなんで作家や文芸作品という括りの中で思い浮かぶものを挙げてみようと思う。
まずは野田知佑氏について。私が氏の文章を初めて目にしたのは中学時代に手にした雑誌「ビーパル」の中でのことだ。当時からアウトドアに対する興味が強かった私にとって、こういう旅の専門家のような人がいることが大きな驚きであったと記憶している。
高校生になって活動範囲が拡がると積極的にキャンプやプチ旅みたいなことをやるようになったのだが、そういうときに最初に導入する知識のかなりの部分をこういうところから仕入れてきた。
私の大きな趣味の一つである川での遊びや淡水魚についてもそうで、興味をもってのめり込むようになったキッカケの一つに野田氏の「川ガキ」に関する考え方の影響もあるのは間違いのないことだ。
野田氏は「川」というものに対してのスペシャリストであり、その知見は私などの到底及ぶものではないだろうが、私も含め川というものを愛してやまない人種の先頭に立って活動を続けておられた。
昨今、川遊びに対しては危険視する論調のほうが強い世の中になっている。今年に入ってからもすでに若い人が川遊び中に溺死するという痛ましい事故が起きており、今後ますますその傾向に拍車がかかっていく一方であろう。
氏はそんな時代の流れに抗って、川をいたずらに危険な存在に至らしめないよう様々な提言や警鐘を鳴らし続けたオピニオンリーダーであり、貴重な存在であった。エピソードや書きたいことを書いていくといくらでも書けそうな気がするため、氏についてはこのへんで筆を置かせていただこうと思う。
次は、それらとほぼ同時期に私が大きく影響を受けた作家について触れてみたい。モリエールという名前を聞いたことがあるだろうか。作家というよりは劇作家といったほうが正しいかもしれない。
フランス文学を語るときには避けて通れないほどの巨匠であり、代表作は「人間嫌い」という劇で、私個人的にもそれが一番濃い影響を受けた作品である。
誤解を恐れずいうと、影響を受けたというよりは、作品の中の演者の台詞などに当時の私個人として同調出来る部分があまりにも多かったことに驚愕したという感覚に近い。少々おこがましい言い方になるが、周囲からちょっとした変人扱いを受けていた私にとってショックを受けるほど共感できた人生で唯一無二の作品であった。
フランスでは今でもこれら中世の時代に作られた劇が繰り返し演じられており、かつ人気も博しているなど、市民に当然のように浸透している作品といえるのではないかと思う。
実は私は大学のときの第二外国語としてフランス語を専攻しているのだが、それは全てここらへんが原因であるといえる。幸か不幸かそちらのほうに進路を進むことにはならなかったが、あわよくばフランス座という現地の劇場でフランス語で演じられているこれらの作品を観るという夢をもった時期があったのはいい思い出である。
もし興味を持たれた方がいれば先述「人間嫌い」「守銭奴」「ドンジュアン」などを読んでみてはとお勧めしたい。また、モリエール以外でもフランス文学には面白い劇が多く、代表例でいえばエドモン・ロスタン伯「シラノ・ド・ベルジュラック」などもいい作品だ。
これらは人間の根本となる考え方や生き方、哲学などを考えさせられる内容のものが多く、作品によっては読むたびに違う視点の考えも芽生えたりして私の思考をより多様化してくれたものである。
ちなみに、私は世界を含めた俳優・女優の中でソフィーマルソーが最も好きなのだが、後付けで色々と考えてみれば、彼女の出演する作品に「スチューデント」「女優マルキーズ」など前出のモリエールがらみのものが多いことも理由になっているのかもしれない。
などなど、もっと挙げていきたいところだが、あまり紙面が伸びても冗長になりそうなので涙をのんで終わることにしよう。
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