囲炉裏部屋のキッチン完成を受けて、納屋の屋内に関する大きなリノベーションはほぼ終了したといっていい。ここからまだ少し細かい作業や、それが終わると次は屋外作業という大仕事も残っているが、ひとまず現時点での成果に一息つきたい心境だ。
ここ最近の作業はほとんど時短を意識したヤッツケ気味のことが多く、何をそんなに急いでいたのかという一つの答えが今回紹介するテーマである。
以前、どこかの報告でこの納屋を使って民泊事業を始めるとお伝えしたが、昨年末あたりからそれらの手続きに関する作業が大詰めを迎えており、様々な審査書類を提出するため、屋内の大まかな設備を完成させておく必要が生じたことが最大の原因であった。
それらの審査内容や必要事項に関しては、また別の機会を設けてこちらのブログにて紹介するつもりでいるが、今回はそれらの審査内容のうち、消防がらみの許可が下りるまでのことを紹介していく。
実際に必要とされた全てのことを書くと冗長になってしまうため、あまり手のかからなかった規制に関しては今後の紹介に譲るとして、今回は少し手のかかった内容について詳しくお伝えできればと思う。
まず、消防がらみの許可という言い方をしてしまったが、民泊を営む際には「消防法令適合通知書」というものを所管の官庁に提出しなければならない。これは、実際に宿泊に使われる施設が消防法令に準じているかどうかを見定めたという書類で、要は消防本部のお墨付きというべきもの。
いざ実際にやるとなるとまた別の話になるが、作者は建築設計の経験が1年以上あり、こういった消防がらみのことが全くわからないわけではないため、今回必要だったこともすんなり呑み込んでDIYで全て解決できた。
だが普通に考えると、これをクリアするためにはもともとそれを考慮した設計になっているか、そうでない場合は専門家に設計・工事を依頼して余分な予算がかかるかのどちらかとなる。
とはいっても、普通に設計建築された住居において、消防法令を無視したものは簡単には造れないのが実際であるのと、設計図面さえ用意できればさほど難しい検査でもないことは付加しておくべきだろう。
難しいことを並べ立てる前に、実際にやったことをお伝えした方が早いかもしれない。まず冒頭の写真についてだが、これが今回用意しなければいけなかったものの一部で、火災警報器という設備である。
まず、今回作者が思い違いをしていたのが、これを義務付けられたことであった。作者がもともと持っていたイメージとして、民泊施設というと、実際にオーナーが居住している自宅を使うか、居住地からは離れた建物を使うか、大きくその2種類に分かれると認識していた。
もともと民泊という制度が始まったとき、作者のイメージというのは前者のほうが圧倒的に強く、要はオーナーが自宅のみを貸し出すという形が多かったのではないかと思うが、これは勝手なイメージで、逆にいえば、使っていない物件を所有しているオーナーがそれを貸し出すケースも多かったろうと認識している。
それらのパターンがインバウンドに伴ってブラッシュアップされた結果、オーナーが複数の施設を扱うようになってきたのが後者のほうで、今現在の民泊のイメージというのはこちら側の、よりビジネス色の濃い実業家が運営しているというパターンを想像することが多くなった。
なぜこんな話をするのかというと、これから説明する火災警報器の設置義務にこれらが大きく関わってくるからで、簡単にいうと、前者である居住している自宅で運営する場合、火災警報器の設置義務は寝室でのみ適用される(施設の規模にもよる)。
つまり、オーナーが実際に直接管理できる施設であるため、設置は極微小のもので良いということで、作者の場合、距離2〜3メートルほどの同じ敷地内であり、当然こちらが適用されるものと思っていた。
実際に広島県で民泊を管轄している課の見解では、作者のケースというのはこちらにあたり、書類手続きは全てそれを前提に行っていたため疑いを持っていなかったのだが、結論から言うと、消防の見解はまた違ったものだったのである。
居住している母家と、運営する納屋が屋根続きでないため、消防上は離れた建物として処理するという判断であった。
実際のところを耳打ちすると、所管である安芸高田消防署において、作者のようなケース例がなかった(田舎なので)ため、担当官自体はかなり迷っていた(素振りかもしれないが)ようだが、より万が一の際の責任を逃れられる無難な決定をしたということになる。
この決定により、納屋全体で冒頭の写真の警報器が5台ほど必要になり、かなり手痛い出費となった。今さらだが、写真の警報器の種類は「特定小規模施設用自動火災報知設備」(通称「特小」)という、命名した人のセンスを疑うような長ったらしい名前で呼ばれるもの。
これは一般で使われる自火報とは明確な違いがある設備で、複数設置しておいてもどこか一つが火災を検知した場合、全てが連動して警報を鳴らすという、より高性能な設備である。
作者がこの消防の決定に最もガッカリしたのはその価格の違いにあり、通常の自火報(自宅施設の場合はこれ)であればホームセンターで2〜3000円程度で購入できるところ、こちらの特小の場合は身近に購入できる場所がなく、ネット購入で1台1万5000円もしてしまう。
つまり、作者にとってこれがいかに青天の霹靂かがおわかりいただきたくて長々と説明した。
ただ、金銭的にはかなり痛かったが、もともと必要だとも考えていた設備でもあったため、必要とされたことに不服はない。不服だったのは、これの設置場所についてである。

この火災報知設備は大きく分けて煙感知式と熱感知式の2種類があり、今回の納屋ではその両者が必要であった。これは設備として利用者が使う可能性がある場所や、直接使わなくても関係している建物内の場所などを、担当者が査察して決定する流れで、右の写真は指定の位置に熱感知式を設置したところを撮ったもの。
基本的に、寝室となる場所や出火原因となりにくい場所に関しては煙感知式が指定され、出火原因になり得る場所では熱感知式が指定されるのだが、今回作者が問題と感じたのが、この写真の場所であった。

左の写真をご覧いただければわかると思うが、この報知器は囲炉裏の間の吹き抜けの棟木に取り付けている。報知器の設置位置基準はかなり細かく設定されており、この場合作者が問題視したいのは「天井」という定義についてだ。
吹き抜けである場合、当然天井がこのような屋根裏になるという考え方は言葉の上では理解できるが、この考え方にはそもそもなぜ自火報をつけるのかという、最も肝心な認識が欠如していると言わざるを得ない。
この、納屋でも最も高い位置の、それも熱感知式の報知器が作動するということは、ほとんどこの建物が全焼する直前ということになり、「燃え尽きました」と報告するに等しい場所だと思う。
そもそも論として、自火報というのは居住・宿泊する人間の避難を促すためのものであり、燃え始めた際の初動が大事で、1分1秒を争うために発報するものだと信じている。
つまり、作者の考えに基づくとこの棟木の下につける報知器には何の意味もなく、ただ単に教科書通りに必要だから取り付けろという、お役所仕事ここに極まれりといった感が強い。
もっと言うと、この囲炉裏部屋には最大の出火原因となり得る囲炉裏(よくあるお洒落囲炉裏ではなく、実際に焚き火レベルの火を扱う)があり、それを考えても1階の天井にあたる付近に設置するべきだと考えた。
そのことを担当官に主張し、実際は1階の天井にあたるはずの梁もしくはその高さの柱に直接つけることが出来るよう交渉したが、検討の結果、こちらの何ら有効性のない場所を指定されてしまった。作者としては1万5000円をドブに捨てさせられた気分である。
実際のところ、囲炉裏周りには必要不可欠と考えているため、今後その主張したあたりに自主的に設置することも検討中で、さらには指摘こそされなかったが、この警報が母家にいてもわかるよう、母家にもさらにもう1台自主設置することも検討しなければならない。
本来はそういう万が一に対して実際に有効な手法を消防署が司るべきで、作者的には今回の決定に対して何一つ肯じることができなかった。
ちなみに、検査結果が届いた後でコッソリ場所を変えることはもちろん違法で、仮にそんなことをすると抜き打ち検査があった際にいちいち場所を変更しなければならなくなる。が、実際にはそういうやり方をする人も一定数いるようだ。

さて、今回の消防法令適合検査で変更を余儀なくされたのは自火報に関してだけではない。
前回のブログで造り終えたばかりのレンジフードに関しても指摘を受けたことがある。
前回の終わり間際でお伝えしていたミスというのが今回指摘された部分で、こちらの写真にあるダクトと桁の位置関係について法令順守の指摘を受けてしまった。
排気ダクトについては以前母家のときも確認したことで、今回の件は完全に作者のうっかりミスなのだが、簡単に言うとダクトの離隔距離が不十分だったということ。
この場合の離隔距離は、「可燃性のものから10センチ以上離す」ということで、写真を見るだけでは寸法を測りかねるかもしれないが、ダクトと桁の間がその指摘を受けたところとなる。
改めて指摘を受けてみて作者がここの寸法を測ったところ、最短で8センチほどで、つまり2センチ足りない。この指摘を受けたときの作者の心境はなかなかに絶望的で、取り付けたものをいったん外して開いている穴をずらして開けなおし、それで使わなくなった穴の空間を土壁と漆喰で塞いでから再度ダクトをつけなおす、といった手順がすぐに頭の中を駆け巡った。
白状すると、離隔距離確保を怠った自分を棚に上げて、担当官をなじりたい気持ちになったものである。2センチ。そのくらい容赦しろよと。母家のフード設置の際消防に確認したとき、壁を構成している貫や竹はもっとダクトとの距離が近く、さらに壁付けタイプのレンジフードの場合、フード自体を固定するための下地となる木材がダクトのすぐ横を通る設計になっている。
そんなことまで当時確認したときの返答は、「そういう細かすぎることまで指摘するとキリがないから、穏便にすませましょうや(やや誇張)」ということだった。なぜ今回は駄目なのか。
心にもない愚痴が口をついて出てきそうなのでこのへんでやめておく。
実際にこのケースの解決法は2通りしかなく、1つは作者が思い描いた造り替え、2つ目はある措置を行うことで規制免除を得る方法、これらを検討した上で今回作者的にデメリットが少ないのが後者の方だった。
造り替えとなると前述の工程が必要となるが、穴を開け替えるというのは大変な作業で、ここがまだ何も手をつけていない土間の時期だったらまだしも、キッチン周り全てが完成してまだ綺麗な状態である今、それを行えば周囲が土とホコリで充満することになり、かつ残った穴を塞ぐための手間や材料が乾燥するまでの時間を考えると、かなり気が重たくなる作業をしなければならない。
さらに、造り替えたところでその傷跡は残り、見た目にも美しくないため、造り替えにはデメリットが多すぎた。そこでやむなく免除のための措置をとることにしたのだが、それに必要だったのが右の写真のものであった。

これはロックウールという素材で、昔流行していた石綿(アスベスト含有素材)保温材と似たようなものだ。石綿とは違い、一応人体には無害であると謳われているが、素材はかなり細かい綿みたいなもので構成され、素手で触るとかなりチクチクする。
だが現代建築でもこういったダクト周りにはこれが広く使われる。今回とった措置というのは、離隔距離が足りない部分にこれを巻く、ということで、それを実施したのが左の写真だ。
一応消防の指摘では離隔距離が足りない部分だけで良い、ということだったため、全体を被覆するかどうか迷ったが、必要厚が5センチもあり、必要ないのであれば全体を被覆するのはコスト的にも勿体ないと判断した。

それらはさすがにむき出しでは使いたくなかったため、必要充分な被覆だけしてアルミテープで覆い隠したのが右の写真。
今回のロックウールは不本意ながら中国製のものをアマゾンでポチり、検索した中でも最も安価なものを購入したため、実買価格は3000円弱といった程度で済んだが、通常使われるような日本製のものを求めると、短いものが売っていない上に値段も数万円もしてしまう。
安価であろうがロックウールはロックウールであり、消防を説得するために設置するぶんにはこの程度の商品で充分だろうと判断した。
ちなみに、作者が使ったアルミフレキは径が200ミリほどあり、それに合う形状のロックウールは探すのが困難で、径が大きくなると値の上がり方も半端なく、やむを得ず90ミリ弱の商品を購入して切り張りしている。
さらに、この壁の内側でもダクトとの離隔距離はとれていない理屈になるが、その点については完全に不問であった。過去の話等をまとめると、どうやら壁の中は穏便に済ませてもらえるようだ。

これでようやく指摘がクリアできたかというとそうではなく、まだ反対側の屋根裏の処理が残っている。写真は下屋根の天井点検口から裏を覗いたもので、こんな感じで壁を突き抜けたあと左に90度曲げてそのまま奥の壁に抜ける形であることは、前回でも確認できたと思う。
このフレキダクトは天井からワイヤーで吊るす形で位置固定しており、スペース的にも離隔距離(10センチ)を確保することができているため、表側と同様、ダクト下側に離隔距離がとれていない部分だけロックウール処理をしていく。

狭いスペースの作業でもあり荒々しい仕上げになっているが、どうせ見切れないためこれで良しとした。そしてこの屋根裏スペースに関しては、担当官にも表側と同様の処置をとれば良いのかどうか確認したが、少し口を濁したようにそれで良いとのことだった。
だが、よくよく調べてみると、隠蔽された部分に設けるダクトの言及があり、つまりこの屋根裏に通したダクトは離隔距離を確保していたとしても、厚2センチ以上のロックウールを全体に巻く必要があるようだ。
つまり、確認した際に担当官が口ごもったのは、単純にこの法令を見落としたのか、そこまで厳密には問わない部類に入るものなのか、天井裏までは面倒なので見ていないということなのか、はたまた作者に対する温情によるものなのか、どれであろうか。
どちらにせよ、後日、実際に行った消防法令適合検査において、担当官が天井裏を見ることは一度もなく、そのまま適合申請が受理された。ご参考となればよいが。