作者が考える古民家とは
日本全国、行ける範囲で色んな古民家を見てきましたが、場所は違えど概ね共通することは何かを挙げてみようと思います。
尚、ご指摘は承りますが、何分素人の豆知識ですのでその点ご考慮いただければ助かります。
@築100年クラスの一般的な庶民が住んでいた民家は茅屋根であることが多い。 |
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| コスト面や材料調達面などからそうなっていると思われます。地域差はあるみたいですが、普段の生活の中で個々が茅を集めて束にしておき、近隣と協力しあって葺き替えをやっていたケースがよく知られています。そういう所では「萱場」といって個々が茅を集める場所が地区ごとに管理されていたそうです。 |
A茅屋根の場合、天井が高く俗に言う「だて二階」の部分に梁や架構材が多く使われている。 |
| 屋根裏が広いことによるメリットは、囲炉裏などから出た煙の緩衝地帯が作れたりすることかと思います。地域によっては積雪への対応から屋根勾配が急なものもあり、急であればあるほど屋根裏部分は高く広くなります。煙にいぶされ乾燥している場所でもあるため、茅束など乾燥させたいものを保管しておく場所でもありました。 |
B通気性を最重視した造りになっている。 |
| 湿度が高い日本の環境は元来が木造建築に適しているとは言えないかもしれません。木材の大敵は湿気であり、湿気が強すぎると腐食が早まったり、変形したりするためです。先人たちはそういう欠点を補うため、通気性にとことんこだわった知恵と工夫を随所に凝らしています。 |
C断熱性、遮風性には弱く、冬はとてつもなく寒い造りになっている。 |
| 基本的に寒さをやわらげる発想自体が建物にありません。壁は隙間だらけですし、床も材と材の間から地面が見えるようなことも当たり前にあります。そもそも、屋根を支える垂木とそれを支える桁の部分は空間が開いてますので虫なども入り放題です。 |
D囲炉裏はほぼ例外なく設置されてあった。 |
| 囲炉裏の用途はさまざまで、寒さをやわらげることや調理の場であったりの実用面でのこと。間接的には屋根材や柱梁などの耐久性向上などが挙げられます。木材自体もそうですが、茅屋根などは何もしなければ虫などにより浸食されてしまいます。そういった民家にとって有害なものを寄せ付けない意味でも屋根裏が煙で常に満たされている必要がありました。そのため、囲炉裏を使用しないと古民家の寿命はぐっと短くなると言われています。 |
E玄関を入るとまず土間があり、キッチン関係のものは土間に設置されているものが多い。 |
| 昔の発想として、住居にあたる部分に水回りを設置することがなかったようです。ほとんどの民家が家屋の中に住居スペースと作業スペースとで区切られてあり、カマドなどは土間にあるのが当たり前でした。また、雨の日などは濡れた状態で色んな動きをする必要があるため、それらは土間で行われていたと考えられます。 |
F基礎は土台や柱が地面に置いた石の上に乗せるだけの石場建てであり、免震構造になっている。 |
| 現行の建築基準法では完全に違法になります。現代の軸組み工法などでは一般住宅は布基礎かベタ基礎が義務で、それらは全て制震構造(がっちり固めて建物自体を揺らさないという発想)の観点からきています。古民家など伝統工法で作られたものは免振構造(固めずに揺らせることで地震力を分散させて逃がす発想)がとられています。どちらがいいかではなく、より職人の技術が必要とされた時代の建物であるという証のようなものでしょう。 |
G人がしゃがんで入れるくらいの高床式であることが多い。 |
| 通気性重視の項のとおりです。家屋の中で最も湿気が強い場所といえば床下になります。古民家再生においても土台や根太などの床下の材は最も損傷が激しく、再利用困難な部分と思います。そのため、少しでも高くして損傷を抑えることはもちろん、床下に石灰や木炭を撒いたり、通気を少しでもよくするため全方向吹き抜けの状態にするなどの工夫がみられます。また、多くメンテが必要な場所でもあるため、家屋のどこかに必ず入りやすい場所が設けてあったりもします。 |
H木材を空気に晒す造り(真壁構造)であることが多い。 |
| 柱などの耐用年数をより上げるため、真壁構造(壁で柱を覆い隠さず、柱が見える構造)になっているケースがほとんどです。木材は生きものでもあるため、家になってしまった状態でも呼吸をしています。呼吸がしにくい環境(大壁構造など柱を覆い隠す工法)だと20年持てばよしとされているほどです。しっかり呼吸ができていると、100年経っても頑丈で、樹液などを流したりします。欠点としては、よほど太い柱が使われていない限り断熱材を入れる余地がなく、寒さは防げないということです。また、例外として、妻側壁(屋根で壁が隠れない側)は構造上水漏れが発生しやすく、大壁構造としているものもあるようです。 |
I通気性の良い土壁を利用しているケースがほとんど。 |
| コスト面や材料調達面も理由にあるかもしれませんが、これも通気性重視の項のとおりです。現代では、石膏ボードなどを張り付けて断熱材・上張りをしていきますが、古民家では、ツナギの役割として竹小舞と呼ばれる竹を縦横に編んだものを結びつけるだけで、その上から土壁を塗りつけていました。土壁は損傷は早いですが、壊れたとしても同じ材を使って修復が可能な究極のエコ材とも言えるかもしれません。 |
J生活の場である居間は田の字型に配置されていることが多い。 |
| 昔は地域の繋がりが強かったことはご存知のことと思います。冠婚葬祭など人が集まることが当たり前のようにあり、そういう場合には全室ふすまなどを取っ払って大座敷のような状態にして使っていたようです。 |
K居間を囲むように縁側や濡れ縁がついている。 |
| 昔の建物は母屋の構造部にそもそも縁側というものがついていませんでした。長年使用するにあたり、どこからでも出入りできる利便性などのために後からつけられたもののようです。そのため、今に残っている古民家でも、縁側や濡れ縁などは構造土台の外側についているケースが多く、簡単な独立基礎(礎石)などの上に置かれてあるだけだったりします。取り外しが簡単にできるケースもみられることから、祭事などに利用されたということも考えられます。 |
L排煙設備(妻側最上部に穴があったり、越屋根であったり)がある。 |
| 囲炉裏の項のとおり、囲炉裏は必要不可欠なものであったため、煙を逃す働きをする仕組みが必要だったと思われます。吹き抜け構造であれば当然、屋根裏に収まりきらない煙が住居スペースにも流れてくることになるため、風の流れなどを読んで配置されています。また、茅屋根の場合、煙が下に流れない構造(屋根裏と住居スペースに仕切りをつけて排煙設備などで屋根裏方向に一方的に流れる構造)にすると、屋根全体が煙をじわじわと吸い上げ、外からみると屋根全体が煙を吐き出すようになっているらしいです。ただし、火事にならないよう、煙の温度を上げない工夫が必要になるでしょう。 |
Mトイレ・風呂は基本、離れであった。 |
| 土間の項のとおりです。家屋内で水を使うことが前提としてあまり考えられていません。有名な五右衛門風呂なども古民家の歴史からすると現代の感覚に近いもので、屋内にある場合、後付けリフォームが多いように思えます。現行の古民家では、縁側の外側に後付けでトイレ小屋がついているケースを多くみかけます。 |
N構造上重要な役割を果たしている他の柱より頑丈な「大黒柱」があるケースが多い。 |
| 現代ではほとんど手に入らないか、あったとしても庶民が買える値段ではないような立派な太い材が家を支える中心部分に使われているケースが多くあります。とは言っても、どの家にも必ずというわけではなく、資金力や身分などの差により違いがあると推察できます。通常の柱の基礎は外周部でなければ大きめの石ひとつだったりしますが、30cm四方の柱の基礎などは大石が何個も敷き詰められて頑丈に固められています。 |
O主要構造部などの木材は今も生きているものが多く、古材として再利用が可能。 |
| 木材を大事にする構造であるため、100年を経ても何の遜色もないばかりか、建設当時よりも頑丈になっているケースさえあります。また、囲炉裏の煙にあぶされる位置にある梁や柱は真っ黒く炭でコーティングされ、虫も寄り付かず、意匠としても見栄えがぐっとよくなります。また、床材などでも無垢の一枚ものが使われている場合、いい古色が出ているため、リフォームの際もそのまま使えるものが多くあります。年を経れば減るほど味が増し、人間と同じように歴を重ねてともに成長していくのが実感できるはずです。 |
P農業・畜産などに利用されることがほとんどのため土間に家畜小屋がついているケースもある。 |
| もともと古民家は住居というより、農家が効率よく毎日の仕事ができるための家屋として出発したようです。そのため、住環境を充実させるよりも農作業がしやすいための工夫の方がよりみられるといえます。農家が畜産業を兼ねたりしていると、家畜を飼育しなければいけませんが、離れや納屋のスペースがない場合などは母屋に直接家畜小屋がついているケースもよくあります。 |
Q材と材は継手で接合され、釘さえも使われない日本古来の伝統工法で作られている。 |
| このあたりにも木材の特質を熟知した職人の技がみられます。継手とはただ単に噛み合うような凹凸をつけるだけではありません。木材が年月を経てどのように変化(膨張・伸縮・曲がり)するかまで完璧に計算された上で継いであります。例えば凹部に凸部を刺しただけではなく、凸部が凹部の中で膨張して抜けにくくなるといったことまで考慮されているらしいです。ここまでくると素人にはとても真似のできるものではありません。 |
R現代の価値からすると立派な材(太い柱梁や無垢材)がふんだんに使われている。 |
| 早い者勝ち、というわけではないでしょうが、今では同様の材を求めることが困難になっていると聞きます。ただ、再利用の項のとおり、古民家再生や移築再生でそれら貴重な材が再び使われることになり、使用されない場合も捨てられることなく古材ショップで売られていたりします。逆に、ツーバイフォーなどに代表される現代の在来工法などで使用された材は再生余地がなく、処分するしかないほど材に違いがあります。 |
S木だけで作られているものがほとんどで、新建材がないため、人体に優しい。 |
| 無垢材や土壁、あらゆる部位が自然のものだけで作られ、釘や金物さえも使われていないため、シックハウスなども起こらないと言われています。 |
長くなってしまいましたが、思いつくだけ挙げてみました。探せばまだまだあるでしょうが、私の探している古民家の定義があるとするなら、上記のような条件をまず満たしているものだと考えます。
自身でリフォームするにあたり、断熱性の部分と水回りの部分には予算とも相談しながら現代的な手を加えたいと思っています。
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