生活用山水の起源探訪
今日は我が集落で使用している山水についてのお話。古民家ブログの方でもたまに触れることもあったかもしれないが、我が家で使用している生活用水はそのほとんどをこの山水でまかなっている。
具体的にいうと家で使っている生活用水は2種類あるのだが、そのうち上水道は台所のシンクに設置してあるもの1基だけにしか今は接続していない。従って、風呂、トイレ、その他の水は全てこの山水を使っていることになり、我が家の生活には必要不可欠ということになっている。
実際、昨年に安芸高田市を襲った豪雨の影響からしばらくこの山水の供給が止まったことがあった。普段大人しい小川が濁流に変わり、山水の給水管を破壊してしまったためだが、その間我々はお風呂にも入れず、トイレも上水道で一度バケツに汲んだものを流す日々であった。
そのくらい重要な山水であるが、この山水というものを常に安定供給する環境を作るためには定期的なメンテナンスが必須になってくるのをご存知の人は少ないかもしれない。
個人でひきこんでいるような人でも、給水管や濾過槽、プールしておく設備などに砂やゴミが詰まるのを防ぐための掃除やメンテが必要であるし、集落でひきこんでいるような我々のパターンでもそれは同様だ。
我が集落ではほぼ半世紀ほど前に先人達が集落全ての建物に山水を供給するシステムを造り上げた。これのおかげで水道代を支払うことなく生活ができるのだが、その便利さとは引き換えにこのシステムを維持管理することが必要になってくる。
具体的にいうと、まず大きいところでは年1度の大掃除である。これは集落にある全ての世帯から最低1名が集合し、山水を貯蔵しているタンクやその周辺を清掃後、神主にお祓いをしてもらうという重要な行事になっている。
またそれとは別に、集落の全世帯が輪番制で半年間に2回ずつ取水口の詰まりなどを確認し必要であれば清掃する当番というものもあり、今回はそのときのことをレポートしようと思い立った。
前置きが長くなったが、冒頭の写真はその取水口に行く際の入口となる部分を撮ったもので、こんな感じでここより奥は集落の関係者以外立ち入り禁止になっている。
過去にもここより上流域のレポートをしたことがあるが(そのときの記事はこちら)、そのときと今回の最も大きな違いは右の写真の如く昨年の水害の被害が顕著になっていることだろう。
水害で折れた大木や流されてきた木の数も膨大なものだが、何よりこの取水口に向かう道がズタズタに破壊され、車両での通行が不可能になってしまっていた。行政による復旧が行われていなければ未だに徒歩で30分かけて登ることを余儀なくされていたはずだ。
そのくらい昨年の水害がこの集落の自然に与えたダメージは甚大で、生態系が変わってしまうレベルであらゆる生き物の住処をぶち壊してしまった。被害を受けて以後まだオオサンショウウオやホタルを見る時期を迎えていないが、この夏にまたレポートできればと思う。
そんなこんなでさらに山道を遡っていくと左の写真のような堤がある場所に到達する。山間部と隣り合わせの田舎ではこういう集落ごとの堤防が沢の上流部に造られているところが多い。
用途としてはもちろん集落の稲作のためであるが、こういう各個に設けられた堤防が集中豪雨などで決壊し、各地で鉄砲水や大水の被害が出るに及び、用をなしていない堤防をなくすような動きも出始めている。
我が集落では未だに現役の農家が多くここからの水が必要不可欠であるため、すぐに撤去ということにはならないと思うが、個人的にはこういう堤をかいぼりしてみたいという衝動は常に持っている。昔はこういう堤をかいぼりしたときによくウナギなどを捕まえていたという話が多い。
ちなみに、右の写真はその堤防のすぐ下流に設けられた小さな堰である。稲作のシーズンになるとここの堰を開けることで大量の沢水が用水路を辿って各田んぼに流れていくことになる。
そうこうしながらも更に上流を目指していると左の写真のような構造物が現れる。この3〜4メートル四方のコンクリに囲まれたものが山水を貯蔵するタンクになっている。集落の全戸がそれなりに使ってもしっかり振り分けられるよう、かなり膨大な量の水が蓄えられている。
コンクリートのタンクの上部にある社はこの一連の山水を守る水神様が祭られているそうで、年1度の掃除と合わせて年に2回ほど集落を挙げてこの社を祭るのが大事な行事ということは先ほども説明した。
コンクリのタンク上にはマンホールが設置されており、それを開けると写真のように上流から送られてきた水がタンクに流れ込んで行き、溢れる直前で流れ込みが止まる仕組になっている。
水害の直後はここに全く水が流れ込まなくなってしまい、集落を挙げて給水管のメンテや補修、水の送り込み(大型ポンプを使う)を行った。それでも今この写真で見られるような勢いの良さはなく、少し水が溜まっては使い、使ってはすぐ貯蔵が枯渇して水が止まり、という負の連鎖を繰り返していた。
今は全て元通りになっており、何らトラブルもないため今回の巡視は特にやることがなさそうだ。
最後にそれら全ての大元である取水口を紹介して終わることにしよう。過去にもどこかで説明したことがあるように思うが、これまで散々「山水」とわかりやすい呼び方をしてきたが、正確にはこの水は「沢水」であることがよくわかる写真と思う。
文字通り、沢の水を何ら加工なしにそのまま貯蔵し、濾過もなくそのまま各家庭に給水されているシステムである。古くからこの集落に住む人のうち何人かはこの水をそのまま飲用水としても使っているが、私にはその勇気はない。
ご覧の通り本当に沢の水をそのまま溜めているだけであり、年に1度行っている水質検査でも僅かながら大腸菌が検出されたりし、煮沸しない飲用は推奨されていない。
こういう沢の水はどれだけ上流で澄んで見えていたとしても、それより上に住んでいる獣の糞尿が含まれたりすることで飲用に適さない成分を含んでしまう可能性が充分にあり、沢に慣れた人はこういう水は飲まない。
だが、それ以外で使う分には使いたい放題のとても便利な水なのである。我が家には淡水魚を飼育している水槽が大量にあり、水を替えたり水槽を洗ったりするだけでも数百リットル単位の水を消費してしまう。
これを全て上水道でやれるかというと、水道代がとんでもないことになってしまうため二の足の踏んでしまうだろうし、さらに山水そのものということで淡水魚にはうってつけの水質であり、カルキ抜きなどの手間や負担も必要ない。
今後は納屋のリノベーションが終了次第、外構の整備にとりかかることになるが、そのときには庭にこの山水を常時流すような人工渓流を作りたいとも思っている。
などなど、集落でかなり重宝されている山水についての報告はこんなところだろうか。よくよく考えてみると、集落を挙げて掃除をしたり、輪番制で見回り点検をしたりするのはいいが、年齢的にも私自身が今後集落の最後の一人になる可能性は極めて高い。
そうなったとき、若しくはそれより前の段階でこの水の給水経路に大きな瑕疵が発生した場合、最悪このシステムを放棄することも有り得ることかもしれない。そんなことを考えながら今は無限に湧いてくる水を使わせてもらっている。
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