細見谷
帰広したときからの目標であった細見谷のトレッキングに出かけてみた。以前から触れてきている通り、私はこのあたりの渓谷が中国地方でも最も興味を惹かれるスポットである。
位置としては、広島有数のスキーゲレンデもある恐羅漢山(おそらかん)のすぐ南にあたり、十方山とその裾野を流れる細見谷川周辺のことを差す。中国地方で随一といっていいほどの生物多様性のある地域だ。
このあたりの谷は川を取り巻くようにして原始からの樹木が息づいている場所でもあり、それら自然がそのまま残っている部分を「渓畔林」と呼ぶ。沢沿いにはサワグルミやトチの木、ブナやミズナラなどの広葉樹が約5kmにもわたって茂り、多くの動物の命をはぐくんでいる。
南西日本ではかなり珍しい動物なども生態系が維持されているらしく、ツキノワグマやクマタカ、オオサンショウウオ、ムササビ、ヤマネ、ミゾゴイ、アカショウビンなど自然の豊富な東北などにも引けを取らないほどの生物多様性を誇っている。
入山ポイントはざっと考えて4つ。吉和側にある十方山林道の入口から入り細見谷川の上流から川沿いに合流するルート、恐羅漢山側にある二軒小屋から十方山を目指して進むルート、立岩ダム登山口から十方山頂を目指すルート、立岩ダムそばにある立野キャンプ場から細見谷川に入渓して沢登りしていくルート。
将来的にあらゆるルートを知りたいと思うが、今回は吉和側から入るルートを選択した。一応、最終的に目指すところは十方山頂と設定したが、登山が目的ではないため、状況によってベターと思える選択をしていくことになる。
この吉和側からのルートは3つの登山道ルート(沢線以外の)の中では最も時間のかかるコースで、それだけに生物遭遇率も高いだろうと期待しながらの出発となった。
今回、一番力を入れた部分は天候に対する吟味である。梅雨明けからこっち、降水確率0%の日が全くなく、ようやくそれに近い状況の日が設定できた。本来であればもっと早めに行きたかったのだが、どうせなら良い天候で行きたい。
出発時より快晴で気持ちよく車を走らせる。しかしその気持ちよさもつかの間、現地付近で一瞬で表情が曇った。目的地の山だけが黒い雲で覆われ、その他の場所は全て快晴というあり得ない状況を目にしてしまったからだ。
私の雨男伝説がいかに揺るぎないものであるのか、今度書いてみるのもいいかもしれない。雨請い師という職業があれば、間違いなくトッププロになれる自信がある。
ともあれ、入口に到着。雨である。その他の場所は全て快晴であった。当然、時間とともに晴れるだろうとタカをくくっていたが、30分待てど雨の勢いは衰える様子がなく、やむなく濡れながら出発した。
さっそく最終目標を変更し、3〜4時間歩いたあたりで折り返し下山と設定。結果的に雨はほぼ止まなかった。
ただ、道中はやはり楽しい。細見谷川と合流してからは水も豊富になり、林道を横切るような流れ込みや湧き水が多い。このあたりを探すと簡単にサンショウウオなどが見つかるというが、今回はおあずけ。
生物調査は次回以降とし、とにかくルートをしっかり見ておくことにとどめる。しかし、雨が降っているとはいえ、歩いている林道がほとんど小川状態になっている。ある場所では川の上に掛けてある橋が、流れる水で川のようになっているというありえない状態であった。
往復8時間の探索であったが、生物の濃さを肌で感じる。私が見たものだけでも、カワセミなどの鳥たちや、ヤマネらしき金色のネズミ、ヘビに至っては7〜8匹(ほとんどマムシ)に遭遇。そのどれもカメラに収めることができず残念である。
沢は思っていたよりも幅が広く、ここにゴギがいるのかと思うとワクワクしてくる。紅葉期にも来訪し、ゴギの産卵を見てみたいものだ。
今回、大きな失敗としては、アブの密集期だったことである。この付近の山ではだいたい8月半ばくらいになるとアブが大量発生し、入山者を悩ませるらしい。私はそれを知らず、数えきれないくらい刺されてしまった。
車を降りた直後からアブがまとわりつき、常時10〜20くらいのアブが服にとまっているような状況で、従って行きの道中ほぼ休憩をとれなかった。それが早期下山と写真が少ないことの原因になってしまっている。
次はいよいよゴギとのご対面が叶うのだろうか。
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