物件購入の顛末E
前回までの話で息子と関わることで物件全体の負の印象が強くなってしまい、今後は購入の見合わせと両天秤で考えていくこととなる。ただ、自分も関わってきた諸手続きなどがあるため(所有者と連名で申請書を出したりもしている)息子側に諸々の事情を理解できる可能性がある限りは少し辛抱しながら交渉を続けていくことを決意する。
ただ、この最初の接触もそうだったが、この後も息子とのやりとりは常に遅きに失した形で進行していくことになる。簡単に言えば何かを検討すると言ってもその一つの返答を得るために毎回1カ月くらい、こちらの催促があるまで返答をいただけない形で進行していったということだ。
最初の電話から20日経っても何の連絡もないため、初めての催促の電話を実行。しかし繋がらず、息子からその返電があったのは翌日。「母親と話し合った結果、このまま買ってもらいたいということで決まりました」との言葉が聞け、ほっと胸をなでおろす。
前回で話したとおり、こちらが作成した売買契約書を送付するためPCメールアドレスを教えてもらい、こちらは本日中にすぐに送信する旨を伝える。息子からは、契約書を見ても私たちではわからないだろうし、専門家等に相談したりもしたいため少し時間をくださいとの申し出を了承する。
それより5日後、早速息子より携帯にメールが届く。一瞬、思っていたより早いレスポンスに驚きながら確認すると、「まだメールが届かない」との内容。PCメールを送った際に携帯メールで確認しておけばよかったが、教えられたアドレスが現在使用していないアドレスだったらしく、それとは違うアドレスに再送信することになる。そちらのメールはすぐに確認がとれ、息子より返信「近日中にお返事します」とのこと。
それから40日経過後何ら返答をいただけない状態のときに農業委員会から農振除外申請の場所に立ち会ってほしいと連絡が入る。そのため検討の進捗状況を確認すべく催促の携帯メールを送信。同日息子よりメールで返信があったが、「来週姉と会うので話をして来週末には連絡します」との返答。なぜ姉と会う必要があるのか気になったが敢えて理由は聞かず、結果的に何ら返答をもらえないままに作者が農振除外の立ち合いに対応する。
それから10日後ようやく息子より入電。「姉と母を交えて話をした結果、やっぱりそちらに売ろうと思います」あまりにも予想の範疇を越えた2度目ともなる売る発言に驚きを禁じえず、契約書の検討の結果を聞くとどうやら専門家などへの相談はしていないとのこと。この返事を得るまでのおよそ2カ月間、一体何をしていたのか疑念を抱かずにはいられない。
作者の感想としては、売ることに積極的でない息子が、母を説得するために味方(姉)をつけて篭絡しようとしたのではないかと勘繰ってしまう。姉という存在が母親の味方をしたのかどうかはわからないが、それら家族会議で母の意思を覆らせることができなかったものと見受けられた。
ただ、契約に前向きな発言もあり、「話し合った結果、なるべく早く顔合わせして成約したほうがいいだろうと思うので1カ月後くらいにそちらに向かうつもりで準備するので検討してほしい」とのこと。こちらが出先で電話をとっていたため具体的な話には言及せず、こちらでも検討して再度連絡することで通話を終える。
所有者側がなるべく早めにと契約を考えているのは、こちらが当初そのようにするために話を進めていた(屋根の修繕を急ぎたかったのが主な理由)ためで、この段階に至ってはこちらの都合や事情がだいぶ変わってしまっていたことがあり、結論から言うと契約するのは春先(4〜5月頃)でいいと返答する。
息子の態度を見ている限り、両者が前向きな形で契約前に屋根の修繕をするのはすでに非現実的な段階に至っていたことが大きい。この話に至るまですでに3カ月が経過しており、その間にも建物は雨に侵食され続けている。今更感が強いし、これから降雪期に入ろうという時に素人が屋根修繕をするということも少し無理がある。
また、市の補助金制度の関係もあり、来年度(4月以降)の売買契約にした方が作者にとってメリットが出てきた部分もあったため、わざわざ寒い時期にこちらに来ることはないと思ったのも大きな理由だった。
ただし、手続上、4〜5月の本契約にこぎつけるためにはどうしても急いで動かなければいけないことが数点あり、(転用・登記移転手続きなど)どのように動いていくかの意思決定をすぐに決めてほしい旨お伝えする。動くといっても実際に動くのは作者の方だから、所有者としての意思決定をしてほしいと依頼。息子よりすぐに返信があり、「わからないことが多いため母と相談しながら返答します。わからないことは電話で教えてもらいながら進めていきたいと思います」とのこと。
しかしその返事が全くこず、1カ月経ってもレスポンスがない。そうこうしているうちに農振除外の公告縦覧が出たことの通知がきた。つまり、最初に農業委員会で申請を出したときから半年後に除外になるとされていたものがこの段階(残り2カ月余り残った段階)に公示されたため、手続きにかかる日数を少しでも稼げるよう、地目変更申請を今のうちにやっておくと2カ月後正式に除外されてからやるより早く手続きができますよという通知だ。今この時点ですぐに申請すれば4月中に契約することも可能なギリギリのタイミングというものだった。
ただ、現状こちらと相手の温度差が極めて激しく、そのような話にはとても応じてもらえそうにない。このままではどんどん契約日が無駄に遠くずれ込んでしまうため何度目かになる催促メールを送信。公告縦覧が出ていることを伝えてはみたが、恐らく意味がわからないだろう。しかし、この催促のメールにさえ息子は返信を寄こさず、2日後に再度催促のメールを送信。
そして息子から来た返信に作者は絶句することとなる。「母は売る考えです。私はそのまま置いておきたい思いがあるのでそのことで口論となり、まだ一切話は進めていません」目の前が真っ暗になるような衝撃を受ける。それとともに、この息子と話を続ける限りこの話は絶対に成就しないことを確信した。
そもそも、所有者が物件を売りたいと強く思うようになった原因として、土地の管理を依頼できるような人が集落にはいなくなっているということが大きく挙げられる。田舎というのは口やかましいもので、草刈りをしていないだけで苦情が届いたりする世界だ。管理を頼める人間がいてこそ、維持し続けることができるし、ただでさえ過疎化している集落であれば空き家となって朽ちていく建物が近隣にあるだけでどうにかしろと苦情が届いてしまう。
その上、所有者は田を所有してあり、その農地を現地の農業法人に預けてある形をとっている。その農業法人は預かった農地を元に国から交付金を受けているため、管理が行き届いていないと厳しく指導されることがある。今までは集落の人間の協力があってなんとかやってこれたが、今は高齢化と過疎化が激しいため、農業法人だけの力では広大な(自分の農地を丸投げにしてしまっている人が多い)農地のケアができなくなってしまっているのが現状だ。
そういう理由もあり、農業法人からも個々の所有者にちゃんと自分で管理できる形(誰かに売るなり、シルバー人材などに草刈りを依頼するなり)を作るようにしてほしいと強い要請を受けている事情がある。
また、交付金を受けている都合上、定期的に役人が農地を視察にきたときに契約違反が見つかったとすれば(この場合は例えば草刈りが全然されていなかったりしたとしても)過去の全ての交付額に遡って返還通知がくる可能性があるというものだ。
以上のような前提で、所有者はなるべく早急に、しかも信頼できるような人に物件を売りたいと思っていることが推測できる。それもこちらの少し破格とも言える金額提示にも応じていただけることを考えると、今回の契約をきっと成立させたいとの思いが強いのだろうし、実際に作者本人にも何度も念を押すように「心変わりしないでね。ここまで手続きを進めたんだから、本当にお願いしますね」と伝えていた。
そのような母の思いを知る由もないような息子のあっけらかんとした「私は残しておきたい」発言には、目が点になるばかりだ。そして、この時点ではもう、作者もこの契約が成就しないことを前提にある程度開き直って息子とやりとりをすることを決意したのであった。
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